税務相談から節税対策までトータルサポート
長谷税務会計事務所
不動産業務15年の税理士
(北習志野 徒歩3分の事務所です)
中小法人に適用される800万円以下の法人所得に適用される軽減税率の特例(19%ではなく15%を適用)は、平成29年3月31日まで延長されます。
前回まで、法人成りのメリットとして節税効果の高いものを優先的に解説しました。今回は節税以外のものをいくつか挙げてみたいと思います。まず、よくある話としてあるのが対外的信用力の増大と金融機関の信用力の増大というのがあります。一般論として間違っていないのですが個人から法人成りすればすぐに信用力が増大するというほど単純なものではありません。
言うまでもないですが、法人でも資金調達がうまくいかず苦しんでいる法人は星の数ほどあります。また会社の信頼というものは長い年月かけて育てていくものです。語弊があるかもしれませんが、金融機関というものはお金が十分あって困っていないという人に融資したいのであって、お金がなくて本当に困っている人には融資したくないというのが本音なのです。資金調達で苦しんでいる法人を救うため認定支援機関たる税理士に期待が寄せられているようですが、一度沈みかけた会社の事業再生は非常に困難です。このような場合は法人だから信用力があるとか融資に融通が利くとか全くありません!このよく挙げられている2つのメリットはあくまでも一般論であって、これから設立しようとしている会社の事業計画や担保提供物件に大きく依存していることを肝に銘じておくべきではないでしょうか。次に会社の有限責任について説明したいと思います。まず前提となる知識として個人事業主は無限責任です。そのため事業活動により生じた債務は個人資産(例えば自宅)を売却してでも債務の履行をしなければなりません。ですから事業活動を失敗した場合はその責任を無限に負い個人の資産を全て失うリスクがあります。
一方、合同会社や株式会社は有限責任ですから、たとえ代表者であっても自分が出資した範囲内で責任を取ればよく、残った会社の債務を個人の財産で弁済する必要はありません。この話も法人成りのメリットとしてよく挙げられている内容です。これまた一般論として間違ってはいないのですが、もう少し踏み込んで解説をします。会社の有限責任の話は会社の社員にとっては有利な話ですが、債権者にとってはリスクのある不利な話です。
ですから法人成りをして間もないころは、債務額にもよりますが会社の代表者が会社の債務に対する連帯保証人になったり、個人資産を担保提供することをほぼ間違いなく債権者に要求されます。こうなると会社が債務不履行に陥った場合は、その代表者が会社の残った債務を弁済しなければなりません。会社は有限責任だといって喜んではいても、実際は連帯保証人や担保提供を要求され個人事業主の無限責任と何ら変わらないことがよくあります。また会社の有限責任の話は法人が破たんした時を想定しています。そのようなときであっても個人財産を守ることができるという話ですが、「これから法人を設立して自分の夢を実現し、一財産築こう!」と考えている経営者へ説明することに私はいつもためらいを感じています。有限責任の話なんか頭の片隅に追いやって、自分の考えているビジネスモデルに問題がないか、そちらの方に持てるエネルギーと時間のすべてを費やしてほしいものです。
千葉県船橋市の税理士 長谷知之