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長谷税務会計事務所
不動産業務15年の税理士
(北習志野 徒歩3分の事務所です)
中小法人に適用される800万円以下の法人所得に適用される軽減税率の特例(19%ではなく15%を適用)は、平成29年3月31日まで延長されます。
役員が自分の会社から財産を購入したときや自分の会社へ財産を譲渡したときはどのような課税関係が生じるのか考えてみたいと思います。
(1)財産を購入した場合
以下のような前提とします。
法人名義の土地 取得費4,000万円 時価10,000万円とします。この土地を役員が①6,000万円で購入した場合②10,000万円で購入した場合についてどのような課税関係が生じるでしょうか。
①役員が法人から6,000万円で購入した場合
法人の仕訳として下のような仕訳を考えたくなりますがこれは間違いです。
(現金預金) 6,000万円 (土 地) 4,000万円
(売却益) 2,000万円
正しくは以下の仕訳となります。
(現金預金) 10,000万円 (土 地) 4,000万円
(売却益) 6,000万円
(役員賞与)4,000万円 (現金預金)4,000万円
法人は常に利益追求団体であり時価よりも低く売却することは経済的に不合理です。そのため法人税法上では基本的に時価で取引があったものと考えます。役員は時価10,000万円の土地を6,000万円で購入できたわけですから、その差額である4,000万円の経済的利益を受けたことになります。その部分が役員賞与として認定されてしまいます。
このような取引は税務上最悪のケースであり、役員賞与の4,000万円は定期同額給与の規定上、法人の損金とはなりません。法人は2,000万円ではなく6,000万円の益金となり、役員賞与の4,000万円は損金にならず、しかも所得税法上、役員には4,000万円の給与所得が発生します。
このような取引は絶対にやらないほうがいいのではないでしょうか。
② 役員が法人から10,000万円で購入した場合
上記の内容をよく理解できるならば②のケースは簡単で下のようになります。
(現金預金) 10,000万円 (土 地) 4,000万円
(売却益) 6,000万円
法人に6,000万円の益金が発生して終わりです。個人の課税関係は発生しません。 経済的に正常な取引が行われたためです。時価をいくらにするかという古典的な問題はありますが、時価での取引が成立していれば複雑な課税関係は生じません。
(2) 財産を譲渡した場合
以下のような前提とします。
個人名義の土地 取得費4,000万円 時価10,000万円とします。この土地を法人が①4,000万円で購入した場合②6,000万円で購入した場合③10,000万円で購入した場合についてどのような課税関係が生じるでしょうか。
① 法人が4,000万円でこの土地を購入するということは、時価の2分の1に満たない対価で役員が法人に譲渡したことになりますので、所得税法上の「みなし譲渡」の規定が適用され時価により譲渡があったものとして取り扱われます。すなわち法人及び個人の仕分けは以下のようになります。
法人の仕訳 (土 地)10,000万円(現金預金)4,000万円
(受贈益)6,000万円
個人の仕訳 (現金預金)4,000万円 (土地)4,000万円
(未収金)6,000万円 (売却益)6,000万円
つまり法人は4,000万円で土地を購入したにもかかわらず、時価との差額である6,000万円の経済的利益を受けたという理由で同額の受贈益が課税されます。個人も著しく低い価額で譲渡した場合は時価により譲渡があったものとみなされて時価課税されることになります。時価から著しく乖離した取引は経済的に不合理だからそのような取引を税法は認めないということですね。
② 法人が6,000万円でこの土地を購入した場合は、時価の2分の1は超えていますので①のような「みなし譲渡」の規定は適用されません。よって個人は通常の譲渡所得の計算でよいのですが、法人は①と同様に時価との差額に対し経済的利益に対する受贈益課税が行われます。 すなわち法人及び個人の仕訳は以下のようになります。
法人の仕訳 (土 地)10,000万円 (現金預金)6,000万円
(受贈益)4,000万円
個人の仕訳 (現金預金)6,000万円 (土地)4,000万円
(売却益)2,000万円
法人はたとえ時価の2分の1以上の価格で譲り受けたとしても、時価と譲渡価額との差額は常に経済的な受贈益となります。経済人として不合理な取引は認められません。
さらにこの法人が同族会社の場合は「同族会社の行為計算の否認規定」が適用される場合があります。これは譲渡者の所得税の負担を不当に減少させると認められるときには,その行為または計算を否認して税務署長の認めるところにより,所得金額を計算することができるというルールです。これが適用されると個人も①と同様な取引があったものとして取り扱われます。
もうひとつ注意点をあげるならば、法人に経済的な利益が供与された場合は一般的にはその法人の株価が上昇します。その株価の上昇分に贈与税が課税されることもあります。
法人との間で時価と乖離した取引をすると税負担が重くなるばかりということですね。
③ 法人が10,000万円でこの土地を購入した場合は非常に簡単で、複雑な課税関係は生じません。 すなわち法人及び個人の仕訳は以下のようになります。
法人の仕訳 (土 地)10,000万円 (現金預金)10,000万円
個人の仕訳 (現金預金)10,000万円 (土地)4,000万円
(売却益)6,000万円
法人と役員の間での取引は通常ではありえないような価格で取引を行うこと可能ですが、そのような取引を行うとかえって税負担強くなる場合があります。通常の取引で行われるような時価で取引をすることが税負担を少なくするということが言えますが、時価とは幅があるものです。何を持って合理的な時価とするかは難しい問題であり税理士とよく相談する必要があります。
千葉県船橋市の税理士 長谷知之